夜に咲く華〜その29〜

岬 登夜  2008-10-21投稿
閲覧数[246] 良い投票[0] 悪い投票[0]

帰り際、親分は言いにくそうに話した。

「実は嬢ちゃんの元旦那なんだが、あれから探しているんだが全く姿が見えなくてな。短銃なんて物騒な物持っているから気をつけてな。うちの方でも探して見るが吉原から出ていってりゃあいいんだが」


紅は一抹の不安をおぼえた。どこからか健吾が現れ連二郎を再び襲ったらどうしようと。

「なに、それだけ探していないとすればとっくに吉原の外でしょう。中にいたって心配いらないよ、俺が守ってやるから」

だが、紅の不安は消し切れなかった。


山柴組の外に出た二人はあやめを探した。

「どこに行ったんだろう?あやめ姉さん。紅華楼をまた始められるって早く教えたいのに」

二人は紅華楼に向かって歩いた。二人の後ろを付けている影に気付かずに。

紅華楼の前で看板をじっと見ているあやめを見て紅は声をかけた。

二人を見てあやめが駆けてくる。顔付きがおかしい。

不意に後ろでどよめきが起こり紅が振り返る。そこには短銃を紅に向けている健吾の姿があった。

パンという乾いた音が響く。と、紅の視界にあやめの姿。そのままあやめが紅に被さる様に二人、倒れ込む。

連二郎は間髪入れず健吾の元に走り込む健吾を捩伏せた。

「紅、大丈夫か?」

連二郎の問いに「大丈夫」と答えた。

が、次の瞬間。血まみれのあやめが自分の上にいることに気がつき悲鳴をあげる。

「あやめ姉さん!!」

あやめは力無くぐったりとしている。

「紅…ちゃ…ん。よかっ…た、怪我な…くて。どうせ…田舎でもあまさ…れて。行くところなんて…どこにも…。最後に…家族より私を…必要としてくれた…紅ちゃ…んの役にたてて…よかっ…た…」

紅はあやめの打たれた個所を調べた。背中の真ん中を打たれている。血がとめどなく溢れる。両手で押さえても間から流れていくのが判る。

「あやめ姉さん。また紅華楼を再開出来るのよ。また、紅華楼の一番遊女に戻れるのよ。がんばってあやめ姉さん」

「また、やれる…。またやれるんだ…。よかった…。よか…」

がくんとあやめの首が墜ちる。

「姉さん?あやめ姉さん!!」

紅があやめの身体を揺するが反応がない。

医者が駆け付けたが様子を見て首を横に振る。

「いやーあー」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 岬 登夜 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ