ロザントン事件―・・・あの奇怪で残酷な事件を知らないはずがない。ましてやその街の出身者が・・・「あの平和なロザントンで事件があったなんて、聞いたことがありませんよ。」フィオナはその愛らしい表情で、自分は間違っていないと言いたげだった。
ウィルはフィオナを見つめた。ロザントン出身なんて嘘をついてんじゃないか？そう思い始めた。本当はなにか人に言えない事情があって、ごまかしにロザントン出身なんて言ったんじゃないか？
ウィルの中で少しずつ膨らむ疑いの心。だが、ごまかしにロザントン出身者なんて言うだろうか？今やノイザーしか住んでないあの街の出身者などと言うだろうか？
考えるのはやめだ。あまりにも、フィオナが純粋に言っているように見える。この女は嘘をついているが、自覚がないのだ。少し変わっているだけなのだ。そう思うことにした。
「まあ、いいや。ところでさ、なんで放浪なんかしてんの？言いたくないことなら、言わなくていいんだけどさ。」
フィオナの目が泳いだ。
「なぜ、旅にでようと思ったか・・・・それが、思い出せないんです。」
ますます怪しい。
だが、気にはしない。
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