最近、通勤で使う路上にやけに薄汚れた子供の姿が増えたな…。
高木恭平はぼんやりその光景を眺めながら仕事場へと足を急いだ。
20××年。日本は景気低迷のスパイラルから抜け出せず、格差社会は拡がりホームレス、ネットカフェ難民が急増。ストリートチルドレンも珍しい事ではなかった。地方で職に溢れた人達が皆、都会に集まり、昼間一見平和に見える街も夜には無法地帯と可する。
街にはあちらこちら廃墟ビルが立ち並び、それをねぐらにカラーギャング達がが昼間でも街裏で金品を強奪、押し込み強盗をしている。
高木恭平は数少ない中間層の家に生まれた。父は警察官…とは言っても給料の安い臨時職員で、母は看護婦…とは言え個人病院で治療費の踏み倒しが多いため給料がまともに入らない月もある。
が、一応両親共働いているので衣食住には困らない(決して贅沢は出来ないが)生活は出来た。
大学も奨学金で通うことになり(大学を出たからといって仕事につけるかというとそうでもなく、一番は縁故採用が大きい)しかし、バイトにいく日々の方が多かった。
バイト先は少し治安いい所にあるコンビニで、向かいのお嬢様学校にも弁当を配達している。もちろん先生方が注文するのだが。
「おはようございます」
従業員専用の入口から更衣室に入り制服に着替え、タイムカードを押しに事務所に行くと店長の山瀬が頭を抱えていた。
「おはようございます。店長」
恭平の声を聞き、山瀬は頭を上げる。
「よう、恭平君。やられちゃったよ。同じバイトの安藤君。知ってるだろう?彼の父親が医者やってるって事でバイトに雇ってたらさぁ」
ここで山瀬は煙草に火を付けるため言葉を途切った。煙草は今や高級品で税金が多額に掛けられ一箱安いものでも500円はした。その煙草を山瀬が吸っている。
「最近煙草の在庫が合わないからカメラ仕掛けたんだよね。そしたらさ」
ここで山瀬は煙草を吸い煙りを吐いた。
「安藤君が持ち出してたんだよ。早速、今朝警察に突き出そうとしたんだけどさ。父親がさっききて賠償金払っていったから示談にしたよ。バイトは辞めてもらったんだけど次の人見つかるまで安藤君の代わりに入ってもらっていい?」
ここで断ると自分の首も危ういので恭平は頷く。