大学二回生の春―\r
もうすぐ二十歳になる― 高校を卒業して以来、淳とは、ずっと親友の関係だった。一ヶ月に一、二回、二人で食事したり、淳のレコード探しに付き合ったりしていた。
相変わらず、私には、彼氏は出来なかった。出会いの場は有っても、あの日から始まった、極度の男性恐怖性と、淳への未練で、近付いて来る男性を、堅くなに拒否していた。
淳は、高校の卒業式の日に麗華が言っていた彼女と、付き合ってから一年と少しが経っていた。
「香里、明日ちょっと時間貰えないかな?」
ゼミの先輩、長谷部が急に私を呼び出して言った。
「えっ・・・?時間ですか?」
「明日、予定有る?」
「いえ、別に予定は特に無いんですけど・・・。」
「じゃあ、良いよね?明日、そこのカフェで、三時に待ってるから。」
「あの・・・、先輩、ちょっと。」
長谷部は、一方的に私にそう言って去って行った。何の話なんだろう?と気になって仕方無かった。あの日以来、殆んど、男性と二人っきりになった事など無かった。淳と二人の時でさえ、全身が震え、巧く話す事が出来なかった。時間が経つにつれ、淳と二人の時は、少し落ち着いては居たが、大人数で居る時でも、男性が少しでも近くに来ると、身体が拒絶反応を起こしていた。
先輩に、突然呼び出された私は、翌日、大学近くのカフェに約束通り行く事にした。