翌日―\r
ゼミの先輩の長谷部に、言われた通り、約束の時間にカフェに着いた。
「よう!」
長谷部は、時間より前に来て、席に着いていた。
「思ってたより、早く着いちゃってさ・・・。座りなよ。」
長谷部は、自分の前の椅子を引いて、私に言った。
「先輩、何か有ったんですか?」
私は、椅子に腰掛けるなり、長谷部に聞いた。
「うん・・・、香里にちょっと話が有って。」
「話・・・。」
全く、見当が付かなかった。長谷部は、私より、二年先輩で、歳も二つ上だった。頼り甲斐が有って、優しくて、学生達の間でも、人気の有る先輩だった。
「俺さ、前から香里の事、可愛いなぁ〜って思ってて・・・。良かったら、付き合って貰え無い?」
思いもよらない、急な告白だった―\r
固まって、暫く動けなかった。
「え?私ですか・・・?でも、先輩、彼女とか居るんじゃ無いんですか?」
震えながら、下を向いて、何とか言葉を返した。
「彼女?だいぶ前に別れたよ。香里は、彼氏居ないんだよね?」
「・・・、居ないです。」
「じゃ、良いよね?俺、優しいよ?」
長谷部は、冗談っぽく微笑んで言った。強引な言葉に戸惑っている時、淳の顔が浮かんだ―\r
このまま、いつまでも、淳の事を引き擦っていても、何も変わらない・・・。新しい未来を築か無くては・・・。淳だって、彼女と新しい道を歩いている―\r
優しくて、頼り甲斐の有る、長谷部先輩となら、自分を変えれる、あの日の事も忘れられるかも知れない・・・。と考えた―\r
「私で・・・、良いんですか?」
たどたどしい言葉が、口を突いて出た。
「俺は、香里が好きなんだ・・・。付き合ってくれるよね?」
「は、はい・・・。私で良かったら。」
「ほんと?良かった〜。じゃあ、これから宜しくな。」
長谷部は、満面の笑みでそう言った。これから全て、長谷部に託してみようと、心に決めた。今までの事は、忘れられる―\r
この時は、そう思って疑わなかった・・・。