ハーフムーン ?

 2008-10-26投稿
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ミユキはそれ以上、何も聞かなかった。

そして静かに、ホテルのフロントを後にする。


ホテルを出ると、さっきまで感じなかった冷たい空気が、ミユキの頬を刺した。

目の前には、深い森の緑と、朝霧が広がっている。

どうやらそこは、ミユキの住む街から列車で1時間行った辺りの、避暑地らしい。

だが、あんな夜中には、もう電車は走っていない。ミユキには、ここまでどうやって辿り着いたのか見当も付かなかった。

ミユキはとにかく、避暑地の中を歩いた。

道路の左右には、ひと気の無い別荘が、ひっそりとたたずんでいる。

30分ほど歩いたところで、急に道が険しくなってきた。

ミユキは引き返そうとしたが、霧がさらに深くなり、とうとう戻ることも出来なくなった。

さっきまで霧の中から射していた太陽の光は、完全に霧に隠れてしまっていた。

それでもミユキは前に進むしか無かった。

もはや道は、道ではなく、ジャングルと呼ぶにふさわしい状態になっていた。

そのジャングルを手探りで掻き分けている瞬間、ミユキの身体が左に大きく傾いた。

「キャー!」
ミユキが叫んだ。

そして、100mにも及ぶ草むらの崖の斜面を、ミユキは勢いよく転がり始めた。

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