アリネスは唸って、首を傾げた。
「…」
ロイは少し嬉しそうな顔で、その様子を見つめていた。
「…ロイ君、君もこの癖を馬鹿にしてるんでしょ…?」
アリネスは思わず出てしまった声と仕草に気がつくと、慌てた様子でまた元の表情に戻して、じと目でロイを見た。
「いえ、そうじゃないですよ。そうやって考える癖がついているという事は、多くの物事を日頃から良く考えているという事じゃないですか。やっぱり王女様はこうでなくちゃな、と思って見ていたんですよ」
「え…?」
予想もしていなかった返事に、アリネスは一瞬、困惑したような表情になった。「国民の事や国の事、自分自身の事、多くの事を考えて、最善の方法を見つけだそうと努力していく。とてもいい癖だと、僕は思いますよ」
ロイはにっこりと笑って、言った。
「…」
アリネスはそれを聞くと、頬を赤くして、慌ててロイから目を逸らした。
「どうしたんですか?」
「な、何でもないわ。と、とりあえず、今から訓練をするわよ!」
早口でそう言うと、アリネスは剣を抜いて、
「ミリスさん、お手合わせ願えますか?」
と、少し上擦ったような声を出して、訓練を終えたミリスに呼びかけた。