「来ましたよ。てか、いつもこの時間に来るんで今日は来ないなって思ってたんです。そっちの彼、昨日からこの時間のシフトにはいったから俺の方が詳しいですよ。あの人どうかしたんですか?」
警官は池上君の方に向かった。
「いや、夕方刺されて死んでいるのが見つかって。ここの弁当の空が山ほど出てきたんで聞き込みにね」
池上君はあぁ、と言う顔をした。
「期限切れの弁当をもらいにくるんですよ。可哀相だから時々くれてました」
警官は一応メモを取るがあまり気乗りしていないのは態度で判った。この聞き込みも形だけだろう。しかし、大麻はどうしたんだろう?
「犯人は?」
「さあねぇ。この手のホームレスの殺しは多くてさ。これも未解決かな。ただ、このホームレス、何か持って行かれてるんだがホームレスから物取りするなんて世も末だね」
と笑いながら警官は出ていった。
多分、持って行かれたのは大麻だな。徳さんが大麻栽培しているの知っていて狙ったんだ。
「高木さん。昨日徳さんに弁当渡したんですか?」
池上君が聞いてきた。池上君がどこまで知っているのか判らないが昨日レジを離れたこと覚えてたらまずい。嘘はつけない
「あぁ、安藤の事聞かれてさ。貰ってたっていうから」
ふーん。と池上君はそれ以上聞いてこなかった。
また、窓の下に子供達が集まってきた。壁にもたれ掛かり寝てる子供も多い。
地球温暖化は徐々に進み、この辺りでもハイビスカスやバナナが庭に育っている。南国そのもの。
北海道で雪が稀にしか降らなくなり、白熊はこの前最後のが動物園で死んだとニュースでやってた。
四季が無くなり、熱帯気候になりつつある今ならホームレスもストリートチルドレンも外で暮らすのも過ごしやすいだろう。
23時、昨日の偽女子高生が表れた。このコンビニに迎えに来てもらうんだな。確かに向かいはお嬢様学校だし、みんな騙されるんだろう。
今日は早いから二回戦目か?毎日がんばるなぁ。一人五千円として毎日三人で一万五千円か。まぁ、稼ぎとしてはいいけど。普通に働く所がないもんなぁ。
恭平は自分の時給880円が悲しく思えた。