「あ、あの速水くん!今日…お話しがあるんです。放課後お暇ですか?」
 
 例えばの話。
女の子に放課後に呼び出されるとしたら、どんな用件だろうか。
 決まってる。
 …告白イベントしかない。
 そんな結論を出したはいいが、
 「…あ、ああ、わかった。放課後…だな。」
 すっかり茹だった頭から何とか答えるが、きちんと話せてるかも分からない。
 けど、仕方ないんだ。
だって相手はずっと恋い焦がれていた、三上 有希だったから…。
 「本当ですか!ありがとうございます!!それでは四時に屋上で待ってて下さい!約束ですよ!!!」
 少し不安そうに俯いていた彼女は、パッと顔をあげて嬉しそうに笑う。
 「…ッ!!」
 顔が一気に真赤になった…気がした。
 もう頭の中にエラー表示がでている。
  そんな暴走しかけている俺に気付かず、ペコリと頭を下げて三上さんが去って行く。  
  昼下がりの教室。
 どこか遠くで5限のチャイムが聞こえた。
 何一つ頭に入らない状態のまま午後の授業を消化試合のように流した。
 時計をみると、まだ2時半。
 「そっか、今日は短縮時間時間だっけ。」 「ようやく気付いたのか、京の字…。」
 隣りの席にすわる小暮幹也が呆れたように呟く。見た目は整った青年なのだが…。
 「そんなに彼女からの呼び出しが気掛かりか?んん〜。」
 幹也はニタニタしながら、こちらを覗き込む。顔はともかく性格は崩壊しているのだ。
 「そんなんじゃない!」
 「隠すな、照れるな、俺とお前の仲ではないか。」
  「お前はストーカーか!?この粘着質!」 「そうとも!俺はお前をよく知っている。速水京介君。君が三上嬢をどれだけすいッむむ〜!?」
 「黙れ!お願いだから黙れ…。」
 口を塞がれた幹也はコクコクうなずく。いつものことだ。
 ハァ、と息をはく。何だろうこの疲労感…。
 俺はバックを手に取り、席を立った。
 「もう行くのか、まだ随分と時間があるが…」
 「これ以上はつかれたくないんだ…」
 「そうか、では今日は部活には…?」
 「どうせ今日は依頼整理だからいいだろう?じゃあな。」
 「結果報告よろしく〜!…頑張れ。」
 「…あぁ」
 幹也に軽く手を振って、俺は教室を出た。