少し落ち着いて来たので、俺は彼女の名前と、送り先、ついでに(メインか?)電話番号を聞いた。
「智子!堀内智子です! 年は18よ」
(年下かぁ)苦手…と言うか、俺は今まで、年上としか付き合った事がない。
「ほ、じゃ、智ちゃんだね。俺は、新井一弘。今をときめく23歳。」
「へぇー、じゃ、かずさんだね。よろしくね!」
「んで、何処へ送ればいい?逗子?鎌倉?」
「…かずさんは、何処へ行くの?」
「え?ああ、上大岡。部屋に帰る途中だけど?」
「じゃあ、その、上大岡」
智子は、電車の始発まで、びしょ濡れのまま、その辺で時間を潰す。と言うのだから、勢いで、
「風邪ひくぞ!」
と、俺。
「じゃ、朝までかずさんの部屋に、お呼ばれするわ」
あっさり言った。しかも上からだ!
「って、ほんのさっき、知り合ったばっかじゃん!からかってんのか?」
「だって〜、かずさんは大丈夫って、あたしの中で決まったんだも〜ん」
語尾にハートマークがついていた。その後は、黙り込む俺に、
「ね♪お・ね・が・い」
の、連呼。
これほど太鼓判を押された男は、複雑な気持ちになる。
「…ふぅ、んじゃ、朝までだぞ!仕事行く時、一緒に出るんだぞ!」
俺は負けた。
「やっぱ、かずさん優しくて良い人〜♪だ〜い好き」
(B型だな…)俺は勝手に思っていた。
アパートに着いた。
鉄製の階段を、軽快に登る智子がいた。真夜中に…鼻歌まじりで…