ミユキは逃げ出そうとしたが、ここが崖の中腹だと言うことに改めて気付いた。
しかも丸一日何も食べておらず、ミユキはかなり空腹だった。
「分かりました…せっかくなんで…いただき…ます」
ミユキは店の扉をゆっくりと閉め、静かにカウンター席に座った。
「あのぅ…ラーメン…ひとつ…下さい」
ミユキが小声で注文する。
男は、ハチマキを締め直しながら、にっこり笑ってこう言った。
「へぃ、当店は食券システムになっておりますので、あちらの券売機にて、お好きなものをお選び下さい。」
と、壁の機械を指差した。
ミユキは立ち上がり、券売機にあるメニューを見つめた。
そこに書かれていたメニューは、次の通りだった。
『男のラーメン(並盛)』
『男のラーメン(中盛)』
『男のラーメン(大盛)』
以上
ミユキは迷った末、『男のラーメン(並盛)』の食券を購入した。
食券が券売機からポトリと落ちた瞬間、男は
「へぃ、男のラーメン並盛一丁!!」
と叫んだ。
あらためてミユキは、店内に自分とその男しか居ない事を確認した。
男はそれを察し、ミユキに対し、こう話し掛けた。
「お客さん、混雑解消のため、お水はセルフサービスにてご協力お願いします」