「はい、是非お願いします」
ミリスは持っていたタオルで汗を拭うと、嬉しそうな表情で、その申し出を受けた。
先ほどロイに放ったアリネスの剣の速さを見て、一度手合わせをしてみたいと思っていたのである。
「ねえ、ミリスさん」
「何でしょうか?」
「彼はいつも、あんな感じなのかしら?」
「彼?ロイの事ですか?」「ええ」
アリネスはロイの方をちらりと見て、頷いた。
先ほどの会話を聞いていなかったミリスは、何の事を言っているのか分からない、といった表情で、首を傾げた。
「あの…それはどういう…?」
「いえ、何でもないわ。…さ、始めましょう」
アリネスは首を横に振ると、一瞬にして鋭い目つきになって、剣を構えた。
ミリスは一瞬にして張り詰めた空気に変わった事を悟ると、こちらも鋭い目つきになって、剣を構えた。
「はっ!」
「やっ!」
アリネスとミリスは声と同時に鋭い速さで間合いを詰め、剣と剣をぶつけ合った。
剣の擦れる音が訓練所中に響き渡ると、周りで剣を振っていた騎士達はその凄まじい音に驚いて、二人の戦いに目をやった。
「おい…アリネス様と同等にやりあってるぞ、あのお嬢さん…」
「凄いな…あの子…」