『ユカッッ!!』
帰る支度をして、今、椅子から立ち上がりかけたユカに、
あたしは、声を振り絞った。
緊張して、震えそうになる声を、
気付かれない様に頑張った。
『奈央?!』
キョトンとして、あたしの顔を見るユカ。
『ユカ‥‥あのさ‥‥‥。』
『うん。』
『ひとりで帰るの?!』
『そうだけど?!』
『そ、そっか。』
『うん。奈央は?!聖人と一緒に帰るんでしょ?!』
『え?!うん。』
違う‥‥。
そうじゃないっっ。
こんなコト、
言いたいんじゃないのに。
伝わらないっっ。
こんなんじゃユカに、
伝わらないっっ。
これじゃあ、ただのイヤなヤツじゃんあたし。
決して――
ユカに、聖人とのラブラブぶりを、
見せつけたい訳じゃないのにっっ。
つくづく――
口ベタな自分がイヤになった――
『じゃあ奈央。聖人と仲良く帰んなヨ。
あたしは、ひとりで帰るし。バイバイ。』
待ってっっ。
あたし、
まだ、言いたいコト言ってないっっ!!
待ってっっ!!
『ユカ待ってっっ!!』
クルッッ――
あたしの声に驚いた様子で、
こちらを振り返るユカ。
『ど‥‥どうしたのよ奈央?!
もしかして、あたしに何か気ぃ遣ってる?!
あはは。奈央は、やっぱ――』
『えっ?!』
『奈央はやっぱ‥‥奈央だぁ。』
ユカは――
満面の笑みでそう言った。
『あたしはやっぱ――』
あたしにも言わせてよユカ。
『あたしは、やっぱユカの友達でいたいんだけど‥‥。
ムリかな?!』
そんなあたし達のやりとりを、
まだ教室内にいたクラスメイト達が、
好奇の目で見ていたケド、
そんなの――
どうでもよかった。
『な‥‥奈央‥‥。』
ユカは、
思いがけない、あたしの言葉に、
びっくりした様子だった。
そして――
『ありがとう‥‥。
今までごめんね‥‥ごめん‥ね‥‥‥。』
ユカの目から、
大粒の涙がこぼれ落ちた――