帯をぽんと叩き出来たと合図する。
「戻るとは連絡してあるけど。でもきっと竹蔵さんから聞いて待ってる気がする」
船が接岸し、止まる。
港には大勢の人が集まっているのが見える。
タラップを降りると風に乗り海苔の香がする。
「社長、紅奥様」
声の方向を見ると竹蔵が手を振っている。
「ただいま、竹蔵さん。妙は?」
いると思っていた妙がいなくて紅はがっかりした。
「あいつは宿に残って美味しいもの用意するって待ってますよ。荷物の方は私とせがれの太一とでしますから社長達はあの馬車で華の屋までいってください」
竹蔵の後ろから体格のよい青年が表れた。
「どうも。太一です」
「やあ、大きくなったなぁ。これは華、確か君より二つ位下だ。こっちは海渡。仲良くしてやってくれ」
連二郎は華と海渡を紹介する。
「よろしくね。太一」
華が差し出す手を太一は赤くなって握ることが出来ず、さっさと荷物の方にいってしまった。
「すいませんね。照れてるんですよ。華さんがあまりに綺麗なんで。昔の紅様そっくり、それ以上ですよ」
頭を下げながら竹蔵も太一の後を追った。
紅達は馬車に乗り、華の屋に向かった。
馬車の音が聞こえていた。妙は居ても立ってもいられず外に飛び出した。
妙は紅の顔を見ると着物の袖で涙を拭いた。
「相変わらず、涙もろいんだから」
皆が馬車から降り、紹介も終わると、早速中に案内される。
「ここは、旦那さまと紅様で。ここは華お嬢さんの部屋。海渡様はこちらをお使いください。足りないものがあったら遠慮なしに言ってくださいね」
そう言って妙は華をまじまじと見た。
「まぁ、本当に。そうやって紅様の着物を着られていると紅様かと思うほどですわ」
華は嬉しそうにクルリと回って見せた。
「竹蔵おじ様は母様以上と言ってくれたわよ」
妙は笑った。
「それは失礼しました」
妙は紅に一枚の紙を握らせた。
「そこにおります。紅様がいなくなってからは紅華楼の跡地で小物屋をやっておいででしたが昨年辺りから体調を崩されて。今は内縁の初さんという方がお世話してます」
また女、お父様も懲りない人。
紅はため息をついた。