《西暦20ΧΧ年9月22日・東京都Y区飲食店街廃墟》―\r
最前線を志願したZ区立第一中学校生徒会長・太田カツヒロは早速その洗礼を受けた。
恐怖に満ちた血の洗礼だ。
《手柄を立てなさい》―\r
エウフセラ=ナールマンの声を、彼は何度も思い起こしていた。
多機能ゴーグルを何時もはなさない、彼よりも余程《会長らしい》同校副会長の事だ。
《手柄を立てて梅城会長に近付くのです》―\r
ああ、分かってるさ、副会長―\r
拳銃を持ちながら太田カツヒロは小さく呟いた。
勝っても負けてもこの無謀な戦いは大勢の犠牲を生む―\r
それを指導した梅城ケンヤには必ず責任追及の声があがる―\r
それまでに手柄を立て、しかも自らも犠牲を出したこの俺が、ヤツの命を奪う―\r
その後、今までの梅城路線を糾弾し、この俺が新たなる支配者の座に収まる―だったよな。
中々良く出来たシナリオじゃないか。
だが―\r
事態は彼の予測を大きく覆す展開を示していた。
《第七中学校 三名負傷! 一時後退》
《右翼に展開した二校連合隊 戦力の三割を損失》
《このままじゃ突破される! 至急増援を…》
《司令部より連絡 8名を左翼に 》
《迂回隊との連絡取れません》
《もうダメだ 完全に囲まれた! うあぁあぁぁぁぁああぁあアァアァアァァァァ》
そう。
梅城ケンヤの作戦は、完全に《失敗》だったのだ!
銃声と悲鳴にまみれた無線を聞きながら、太田カツヒロは確信した。
こいつは負けるな―\r
元々兵力からして違う。
800名以上の敵に130人そこそこが総力戦を挑んでいるのだ。
しかもわざわざ敵の《庭》を択んで―\r
これで勝てる方がどうかしてる。
しかも―\r
その相手を現場で指揮しているのが―\r
《アヒャヒャハャハャヒャヒャ!! どうした!!処刑生徒会長さんよ!!!》
とある広場で殺した敵から携帯無線機をひったくり、根岸タクトは狂笑の限りを尽した。
『この程度か?この程度なのかい?おまえらイジメ撲滅同盟とやらは』
血と臓腑で塗りたくられたそれに、彼はドラッグ臭い息を振り撒いた。
『だったらよ、俺がホンキにさせてやるよ』