『ぅう。泣き足りない…』
さっきあれだけ泣いていたのに、楓は帰宅途中もずっとそんなことを言いながら泣いていた。
『なんで、私から離れてくのよ…啓太のばぁか…」
さっきから愚痴愚痴とまぁ、よくもこれだけ悪口が出てくるもんだとばかりに楓は啓太を罵っていた。
涼香はもう、自分の家に帰って行った後、今は楓独り。
周りからは訝しげな目で見られている…。
『なんだよぅ。いいたいことあるならいいなさいよぅ。』
楓は周りの人達を威嚇しながら家に着いた。
『ただ〜いま〜。』
返事はない。当たり前だ、楓の両親はすでに他界しているのだから。
去年の夏交通事故であっけなくこの世を去った両親。
しかし、楓は負けなかった。高校生になりバイトを始め、お金が溜まり始めるとアパートを借りた。
今はそこで一人暮らしをしている。