「紅…紅…。すまなかった。こんな父親…で…」
父親は華を紅だと思っているのか手をとり、しきりと謝ってばかりいる。
「お父様、紅は私なのよ」
父親の目に自分が入っていないことに紅は苛立ちをおぼえた。
なかなか華の手を離さない父親をやっと納得させ部屋をでる。
「紅、いってしまうのかい?いってはだめだ」
華はかわいそうになりまた明日もくる約束をした。
「父の面倒、よろしくお願いします」
紅は初に深々と頭を下げ薬代と生活費にといくらかの金を初に渡した。
帰り道、華が口を開いた。
「母様、明日もおじい様のところに行ってもいいでしょう?約束してしまったし」
「だめよ。明日は母様用事があるから」
明日はあやめの墓参りに出掛けるつもりでいた。
「だったら私一人で行くわ。道は覚えたし」
「一人でなんてとんでもない。とにかく明日は行けないわ」
紅は華にきつく言った。
華の屋に戻ると紅は妙と積もる話に華が咲いた。
華は街の様子を見に行きたかったのだが一人歩きを紅から禁じられていたため入口から外を眺めていた。
太一は荷車を裏から引いて来て妙に声をかけた。
「それじゃあ、行ってくる」
華は太一にどこに行くのか聞いた。太一は華と目を合わせない様うつむいて買い出しに行く事を話した。
「私も行きたい。まってて」
華は紅の承諾をもらいに行き、許しを得たのか草履を履く。
「太一、華様の事頼んだよ」
奥から妙の声がする。
「判った」
そういうと照れ臭そうに行くぞと華に声をかけた。
道すがら太一は華の質問攻めにあう。
「太一さん女の知り合いはいないの?いたら紹介してほしいんだけど。友達になりたいの」
太一はしばらく考えたが華に紹介出来る様な知り合いはいなかった。
「太一さんはずっと家の手伝いを?」
「あぁ。親父が会社の方手伝っているからな。男手がいるだろう?」
しばらく話しをするうちに太一も慣れたらしく普通に話してくる様になった。
「ここから道が悪くなるからこれに乗って」
太一は荷車を指した。いつ用意したのか華が座る様に座布団をひいてある。