こんな冬の始まった日には思い出してしまう。
去年、俺はまだ夢も希望も持っていた。いざなぎ景気を越える、最長記録を更新した好景気の最期に一流企業に就職。慶應というブランドをひっさげて、コンサルタントになった。
待遇はまずまず。都内のかろうじて一等地と呼ばれる範囲に居を構え、会社と自宅を、ときにジムに寄りつ、往復する日々を送っていた。
全てが順調だった。独り言の多い上司、愚痴を言い合う同期、女。それらは今となっては、朝靄のように実体のない、つかもうとしても指の間をすり抜けてしまうような感覚を残すだけだ。
途方に暮れる。
その言葉の意味を初めて知ったのは一ヶ月前。その段階は1週間で過ぎ、その後はツテを片っ端から頼った。
まだ若い。お前なら再就職先もすぐに見つかる。
そう言われたのがつい昨日のように思われる。
結局雇口は見付からず、ここ数日は酒と煙草しか口にしていない。
どうして俺なのか。
なにがいけなかったのか。
2008/10/25
欧米式金融システムが支配していた世界経済を恐慌が襲った。
証券・金融関係企業は、メインバンクの倒産に伴い、相次倒産。多くの人が職を失った。
日本に限らず、資本主義国はアメリカを筆頭に軒並大打撃をくらったはずだ。連日流れるニュースを見ればわかる。
世界はこれからロシア中心に動いて行く。
一時、経済を完全に麻痺させた、この第二次世界恐慌は、第三次世界大戦を引き起こそうとしていた。
去年の今頃、俺はまだ学生で、全てが順調だった。