アパートへ着くと、住人や通行人が上を見上げていた。
私も上を見上げてゾッとした。
Rが部屋のベランダの手すりの上に立っていた。
焦点も定まっていなく、明らかにラリっていた。大声で意味の分らない事を叫びながら、今にも飛び降りそうだった。
Rの部屋は3階。落ちれば大怪我か打ち所によっては…。Rがフラフラする度に、下の野次馬達はキャーと悲鳴を上げる。その悲鳴に反応してRは意味不明な事を叫びながら泣いていた。
「£%&@*A〜A〜@£」
私はハッキリと聞いた。
Rは泣きながらAの名前を叫んでいるんだ。
知らないうちに私は泣いていた。Aが可哀相で、何もしてやれなかったのが悔しくて。私は地面に伏せて泣いた。
「A今行くよ…」
そう聞えてすぐだった。キャーと言う周りの悲鳴と共に鈍い音が響いた。
見ると、Rがアスファルトの上でグッタリしていた。頭が真っ白になった。
「R〜!!!」
駆け寄ると酷い出血だった。意識もない様でピクリともしなかった。Rは幸せだった頃の顔をして目を閉じていた。
暫くして、救急車が来た。それと同時位にご両親も到着した。
「K君(私)迷惑掛けて本当すまなかったね。」
Rの父親が、私の肩をポンと叩いて、駆け付けた警察に事情を説明しに行った。その姿はとても毅然としていた。
私は結局何も出来ないまま、その場に立ち尽くして、Rが乗った救急車が小さくなって行くのを見ていた。