そしたら、彼女が。
私にわかるくらい、
電話の向こうで、ふぅ〜っ(吐)すう〜っ (吸)と深呼吸。
で。一拍おいて。
「自分の一番好きな人に自分が迷惑だと思うようなヤツを、アンタは紹介したいと思うのかぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
って。怒鳴った。
彼女の質問をちゃんと聞こうと、しっかり子機を耳にあてていた私は。
あまりの声のでっかさに思わず、耳にあてていた子機を慌てて耳から離した。
耳の奥の方で、キィンと機械音がして。
本当に目から星が出たんじゃないかってくらいに目がチカチカした。
「えっ・・・」
かろうじて、やっと言えたのが、「え」で。
電話の向こうから、イライラッとした彼女の声が聞こえて来た。
「アンタがね、皆にも、私にもくっだらない嘘をついてたのを、腹が立たなかったわけじゃない。
でも、私の相談にのってくれたり、私が休んだ時に心配して電話くれたりノートコピーしてくれたりしたのは、嘘じゃないでしょ!?」
彼女は怒鳴って言った。
「それに、付き合う事になった彼氏との事、たくさんアンタに話して、相談して、アンタの意見聞いて、頑張れたから」
「付き合う事になった時アンタのおかげだなぁって、思ったの!だから、アンタに一緒に喜んで欲しいし、アンタを一番に彼氏に紹介したいと思ったの!」
って、怒鳴る彼女の声が最後の方、泣き声に変わってた。
「な・・・泣かないで」って、オロオロして言った私に、
「泣かせたの誰!?」
と彼女。
「嬉しい・・・」
ぱっと出た、私のその言葉にはいろんな意味が含まれていたんだけれど。
タイミングが悪かった。
「私を泣かせたのが嬉しいの!?はぁ!?」と、彼女のイライラ声。
慌てて、「ち、違う!嬉しいのは・・・か、彼氏を、紹介して、も、らえるの・・・が、だよ!」と変なイントネーションで言った。
電話の向こうで、鼻をかみながら、
「じゃぁ、来週いつなら時間あけてもらえる?そっちに合わせるからぁ」
と彼女が言った。
込み上げる嬉しさにドキドキというのか、何というのか。下向きだった気持ちが、グングンと上向きになって行く。
「合わせてもらえるなら木曜の夜がいいな・・」
そこで初めて、私は彼女にハッキリとした口調で返事をした。