「…どちら様?」
その人はそう言った。
「あの、私たち、旅の者なんですけど…」
「…どうぞ。」
まだ言い終わらぬうちに女性は扉を開け中へと入ってしまった。
「なんか、調子狂うな…」
取り敢えず中に入るとそこには壁一面の本棚、天井には美しい夜空が描かれ、清らかな水と緑の観葉植物が流れる神秘的な世界が広がっていた。
「わぁ……。綺麗……」
シーラがうっとりと言う。「どうぞ。」
白いテーブルに置かれた5つのティーカップ。
「私はミシャル。この時計塔から伝説を記録する者。」レモンを浮かべた紅茶を飲み、ミシャルという女性は名乗った。
「…あなた。」
ミシャルの明るいブルーの瞳がシーラを見た。
彼女の瞳に捉えられ、シーラは一瞬自分の全てを見透かされるような感覚を味わう。
そしてそれはほぼ正しかった。
「…時間が止まっているのね。それも、20年も前から。」
「!!」
ランスォールもラウフも雪もシーラも、四人全員が驚きを隠せなかった。
ミシャルは四人に問う。
「…それで?
伝説を紡いでいるだけの私に何を望むの?」
それは、女神のような微笑みだった。