「そーいえばさー」
「ん?」
「うっちゃんって好きな人いんの?」
「!?」
勢いよく飲み物を吹いてしまう。
「うわっきったねー!吹いてんじゃねーよ!」
「ごっごめん!」
まだ心臓がうるさいくらいに鳴っている。
「いっ、いないよ?」
布巾で床を拭きながら俺は言った。
なるべく汰一の方を見ないように。
「…だよなぁ〜、うっちゃんはいなそう」
いや、あんたなんだけどね。
でもそんなこと言えないから胸に閉まっておく。
「…汰一は?」
「え?」
「いないの?好きな人」
「…いねーから」
言葉ではそう言っているが、俺の目を見ずに、気まずそうに言っているのがつっかかる。
しかも微妙な間は何。
「…いるんでしょ」
「……………」
急に押し黙る。
意外に素直。
「誰?」
「お前」
「ッ!?」
「嘘だよ」
なっ、なんなんだよ〜〜〜ッ!!!
本気でびびったマジで驚いた
そんなことされるとまた汰一に夢中になっていくじゃん。
やめてよ
こんな恋叶うはずもないのに
期待、
しちゃうじゃん
そんなことしたって、最後に泣くのは俺なのに。
あぁ、汰一は本当に
ドSだ。
こんなに俺を悩ませて楽しい?
*************
「じゃぁもぅ帰るね」
これ以上、汰一の側に居るのは危険だ。
早く帰らなきゃ。
「ぇ、もう帰んの?」
だから、そんなふうに言わないで。
一生帰りたくなくなっちゃうから
「うん。親がうるさいし」
「…マザコン」
汰一がいじけて言う。
そんなとこも、かわいい。
************
あぁ、切ない。
汰一が男じゃなかったら今すぐにでも好きと伝えるのに。
この手で抱き締められるのに。
ずっと、好きでした
って、
言えないのは
誰のせい?
(もう、疲れたよ)
君にとって俺は
一番の
"親友"
なんだろうね
それは俺にとって
とても、
残酷なことだと、思う
*fin*