｢嫌だ…山崎さん…またやってるよ｡｣
｢嘘…アナタ言って来て｡｣
｢えぇ〜嫌よ｡気味悪い｡｣
深夜の病棟で夜勤のナース達が声を潜めて言い合う｡
皆ある患者を毛嫌いしていた｡その患者には少々問題があった｡特にこんな深夜の時間帯には余計と不気味に見えた｡
｢ゃ､山崎さ〜ん｡どうしました？もう寝る時間ですよ｡｣
結局､一番渋っていたナースが患者へ声を掛けた｡
真っ暗な一人部屋で､その患者はナースに見向きもせずに､必死で何かをしていた｡
｢山崎さん､さぁベットへ戻りましょう｡｣
ナースは患者の肩に優しく手を掛けた｡
ビクッと患者の身体が一気に固る｡
シーンと静まり返った病室に一瞬にして､緊張感が漂った｡
ナースは心臓の鼓動を沈める為に､蛍光灯のスイッチを押して明かりを付けた｡
…!!!!!!!!
目の前の光景に､ナースの鼓動は更に高まった｡
ベットの下､棚と壁の間､窓枠の小さな溝…｡
隙間と言う隙間に､患者はシーツを破いて詰め込んでいた｡部屋の中はシーツの白で埋め尽されていた｡
患者は固めた身体をピクッと動かし､ゆっくりとナースの方へ振り向く｡
｢お前のせいだ｡隙間が出来たじゃないか。隙間が出来たじゃないかぁぁあ!!!!｣
｢山崎さん…落ち着きましょ｣
ナースは震えた足で後退りする｡
その間にも患者は狂気して叫び続ける｡その目は殺意さえ感じた｡
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