「木曜日、何時に待ち合わせしようか?」
彼女の声が、さっきの怒鳴り声や泣き声でなく、ちょっと弾んだ声に変わっていた。
「6時までには駅前に着けると思う」
私の口調も、普段と変わらない感じに戻ってた。
彼女が、ふんふんふ〜♪っと鼻唄?な感じで、何か歌っていた。
メモに書き留めているような気配が電話ごしに伝わって来てて。
同じように、私もシッカリとメモを取っていた。
今、このやり取りが、嘘じゃなく、現実なんだと電話を切った後、自分の中で認識出来るように。
そんな風に思っていた私を、大袈裟かと思われるかもしれない。けど。
彼女が言ったように。くっだらない嘘をつき続けて、あげく、
私を信頼し友達として、人として、付き合いがあった人達を裏切っていた現実が紛れも無くあったわけで。
後ろめたさ、のような。降って湧いた喜ばしいニュースを信じきる事が出来ない自分がいて。
嘘をついていたからこそ
逆に人にも猜疑心を抱いてしまうのが、どうしようもなく情けなく。
実際、どんな嘘を重ねていたのか、その時の自分でも、きちんと把握出来ていなかったし。
ただ、自分フォローで申し訳ないのだけれど。
「皆、私の嘘に騙されてる(笑)こんな嘘も、見抜けないのかよ(笑)馬鹿ばっかじゃん(笑)」と、思った事は、一度もない。逆に騙されて、というか、真に受けてくれる方が助かった。
そこまでして欲しかった友達。それって一体何だったんだろう?
淋しかったのか、それとも、これまでの自分を仮想現実の中だけでも変えたかったのか。
これを書いている今、あの頃の自分がどんな気持ちでいたのかを。
思い出そうとしても、思い出す事が出来ないわけで。
都合良く出来てるな、自分。と、ちょっと腹立だしくもある。
(ネタになるのにっ!とかっていう不純な気持ちも今だからある(笑))
チカとの電話は、約束を取り付けた後も続いていた。その日、深夜まで彼女としゃべっていた記憶がある。
お互いの職場の事、最近気になっているお店、服や靴、ドラマの話。
たくさんの事を話した。
一通りに話が一段落した頃彼女が、
「じゃ、また電話する♪そっちも電話して来てね待ってるね〜」
と言って。
それに返事しようとしたら、一方的にプッと電話が切れた。