いよいよ今日。
私は散る。
敵艦隊7隻に対し、我が軍は桜花24機。
250キロの爆弾をくくりつけ、燃料は片道のみ。
出陣式を済ませ、故郷へと手を振った。
敵偵察機にバレないように、かなり上空を飛んでいた。
澄んだ6月の空。
あえて何も考えずにただ、ただ。憎き敵艦隊だけを考え。飛び続けた。
すると無線が入った。
私の後ろを飛ぶ後輩たちからだった。
「先輩、尾翼から黒煙があがっています。」
その事はすぐに隊長の耳にも入った。
しかし私は、「大丈夫。敵艦隊まではもつでしょう、アタックさせてください」
すると隊長は「貴重な機体を無駄にするな、お前は引き返せ。次のアタックへ体制を整えろ」
私は何人もの帰還した人間を見てきた。
とても耐えるに難い対応を受けることを分かっていた。
しかし上官命令は絶対だった…
仕方なく私は知覧へ舞い戻った。
土下座をして詫びた。
その次の日から、晴れた日は毎日、アタックを続けた。
しかし私だけ、何回も知覧に帰ってきた。
ある日、私は山本を疑った。