ダンスタイムが終わり、何も言えずにパーティーの時間も終わりに近付いた。全て終わる時間までに、まだ少し余裕があった。
このまま 今の時間が止まってくれたら…なんて。
まだみんなが騒いでいたが、僕はその会場を出てしまった。階段を足早に降りた。
ふ と、後ろを振り向いた。階段の上に彼女がいた。びっくりして、少しの時間たちすくしてしまった。何か言わないと…。
はっきり…言わないと。
こんな僕を思ってくれている彼女に対しての、出来る限りの…。
そう思って戻りかけた時、彼女は笑顔で手を振った。バイバイ。
僕も それに合わせるように手を振っていた。そして、逃げるように暫く走っていた。
スーツでバッチリ決めていたのに、グシャグシャな顔で走っている変な男。最低だった。
彼女はもっと最悪な時間だったと思う。
後戻り出来たはずなのに、また…流れに任せてしまった。
それからは卒業まで彼女に会う事はなかった。同級生は、いろいろ言ってきてくれたけど、会社の研修に入っていたから…
それに、もう一人の人と付き合っていたし。
情けない事だけど、男として往生際が悪い事だけど、ずっと忘れられなかった。
その彼女とは5年くらい付き合っていたけど、ずっと…。
騙していた事になるね。そういうのって。
結婚の話になるとごまかしていた。
自分のせいで、悲しい思いをさせている。相手の事を考えているから…思っているから…なんて、錯覚。ただ、自分がかわいいだけで。
彼女には凄く悪い。
彼女も僕を愛してくれているのは、充分すぎる程わかってる。…けど、僕は君をシアワセに出来る男じぁない。
まだやり直せる。…僕じぁなく、彼女が。
だから、別れなければと思った。
それから 数年彼女をつくろうなんて思わなかった。最低限の償いだった。
仕事仕事の毎日。だけど、それが生き甲斐だったし楽しかった。帰りがけにおばさんと息子さん(と言っても60歳近い)の営業してる、お寿司と焼き鳥のお店で少し飲んで行くのが日課だった。
取り留めのない話で、一日の疲れが取れる感じだった。
そんなある日、そのお店の息子さんから紹介したい人がいると言われて、気楽に後日会う約束をした。