ミユキは続けて聞いた。
「あなたはもしかして…すべて知ってるんじゃないですか?ショウの居場所も、『メラミン』のマスターの正体も、私がココに連れられて来たワケも、ホテルに一緒にいた男の正体も、えーっと…『ラーメン年金問題』のお店のこともっ」
「ラーメン…?年金…?何だいそりゃ?」
男は首を傾げる。
「あ、いいです…それは忘れて下さい」
ミユキは慌てて取り消した。
「まぁいいや。ラーメン屋も含めて、すべて心当たりは無いよ。本当に私はただのアルバイトなんだから」
男はきっぱりと否定した。
「でも、昨夜まであの街にいたアナタが、今日たまたまココに居る私を乗せて、タクシーの運転手をしているなんて、不自然過ぎます」
ミユキは食い下がった。
「たまたまでは無いよ。ちゃんと、キミの方から予約してきたじゃないか」
男はそう反論した。
「え?アタシは予約なんてしてないよ」
ミユキが答える。
「あれ?あの電話はキミじゃないのか?」
「アタシじゃない。一体どんな電話だったんですか?」
「若い女性の声で、さっきの場所で待っててくれって言われたよ」
「若い女性…?」
ミユキは、外の霧がさらに深まっていったように感じた。