「いや、父さんはお前が未熟だったから反対した訳じゃない」
ライルは首を振って、苦笑いした。
「お前が出て行った日に、父さんは珍しく酒に酔って、こう言ったんだよ『あいつはもっとここで修練を積めば伸びるのに…お前以上に…』ってな。全く…あんな言葉が父さんの口から出るなんて、思いもしなかったよ」
「…そうだったのか…」
セイルはそう呟いて、ぎゅっと唇を噛んだ。
「まあ、歳をくった今となっては、どちらが腕がいいか良くないかなんて、どうでもいい事になってしまったけどな…」
ライルはそう言って、セイルと同じように、窓から漏れ出てくる夕日の光を見つめた。
「あら…これは…」
その時二人は、夕食の用意をするためキッチンに行ったサリアの不思議そうな声を聞いた。
「どうした?」
「いえ…ちょっと。あの、これは何でしょうか?ライルさん」
キッチンにやって来た二人を見ながら、サリアはライルに、地下にある食料庫の奥の方を指差した。
「…これは!」
ライルはそれを見て、目を見開いて驚いた。
食料庫の奥には、炎で黒く変色した細く小さい葉っぱが、袋の中に所狭しと詰め込まれていた。
「…兄さん、これは一体…?」