ラウンジを出て宿舎に向かう途中、グランドからボールが跳ねる音がする。
僕は気になり、グランドに目を向けた。
そこには、見知らぬ男がゴールに向かってボールを蹴るところだった。
その男の左足から放たれたシュートは美しい軌道でゴールに向かう。
しかし、そのシュートは惜しくもゴールバーに当たり彼の足下へ帰ってくる。
「なんだ、ヘボいじゃんか」
僕は何気ない一言を後悔することになる。
僕がそう口走った時、男はもう一度ボールを蹴る。
そのボールはまたしてもゴールバーに当たり彼の足下へ…
男は最初からゴールバーを狙っていたのだ。
僕はしばらく見とれていた。
「おい、何やってんだ!ミーティングに遅れるぞ!」
後ろからマッシモの呼びかけでハッと我に返る。「そうだね。急ごう。」さっきの男が何者か気になるが、ミーティングに遅れるわけにはいかない。
僕は後ろ髪を引かれるおもいでミーティングルームに向かった。