初回は3人で抑えた。
裏の攻撃、相手のエラーと四球でたまったランナーをオレと昇の連打で返し先制した。
2回表、藤村との初対決。
投球練習を終え、昇が守備に声をかけ座る。藤村の素振りを見た感じだと、良いスイングはしているが他のバッターとさほど違いはなかった。
藤村が打席に入り、構えた瞬間だった。
(!!打たれる…)
初めての感覚だった。懐の大きな構え、殺気漂う目つき。何より自信がみなぎっていた。
昇も同じものを感じ取ったのか、珍しくボール球を要求してきた。
(ダメだ!初球から勝負だ!)
オレは、そのサインに首を振った。
思い返せば昇のサインに首を振ったのはこの時1回だけかもしれない。
少し考えた昇だったが、ストライクゾーンにミットを構えた。
オレは大きく振りかぶり、ミットめがけて思い切り腕を振り抜いた。
…キーン!!!
一切濁りのない音とともにボールはだんだん小さくなり、フェンスの向こうへ消えていった。
初めて打たれたホームラン。そしてオレがこれまで唯一打たれたホームランだった。