ハーフムーン ?

 2008-11-07投稿
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バスは低いディーゼル音を響かせながら、狭い道を抜け、ミユキの待つバス停へと向かってやって来た。

ミユキはしっかりとバスを見つめ、上部にある行き先の表示を読んだ。










『回送』


と書いてあった。


ミユキはそれでも、ためらいなく道の中央に歩き出し、バスの行く手をふさいだ。

またバスも、それに臆することなく、ゆっくりとスピードを落とし、バス停の前でキチンと停車した。

バスのドアが開き、ミユキはバスに乗り込んだ。

扉が閉まり、何事もなく、再びバスは発車した。


ミユキは、このバスがどこへ行こうとしているのか、分からない。


雨の中を、無言のバスは走り続けた。



ミユキは、バスの一番後ろに座っていた。

バスの運転手は、いまだ無言で運転を続けている。

前方からは、バスの鈍いワイパーの音だけが聞こえた。


走り始めて20分位たったところで、ようやく運転手の声が聞こえた。

「お客さん、どちらまで行かれますか?」


「…どちらまで行きますか?」
逆にミユキが尋ねた。


「海まで行きますよ」
運転手は答える。


「じゃ、それでお願いします」
ココを抜け出せるのなら、ミユキはそう考えた。



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