〔世界の定義は自分で決める事だから〕
それが、俺の“言葉”に彼女が必ず返す言葉だった。
あの頃の俺はその言葉の意味を理解することは出来なかった。
今もハッキリとは分かっていない。
だけど、たった一つだけ分かっているのは…。
この言葉を言う時の彼女の笑い顔は、何時も自嘲的な調子だったということだけだ。
「…今日の土産はスッゲーんだぜ。まず中央限定の特製煎茶だろ?それと、お茶請けにお前が大好きだった椿餅。まぁこれだけしかないんだけど…十分だよな?」
そう言って俺はバッグから紙コップと椿餅を置くための小皿を取り出した。
「さ、飲もうぜ。今日は聞いてもらいたい事が一杯あるんだからな」
二つの紙コップにお茶を注ぎ入れながら俺は言った。
「――っと、もうこんな時間か…」
少し話しすぎたかなっと夕闇に染まった空を見ながら俺は思った。
「まあ、今年はこんなもんだな」
そう呟き俺は空になった水筒と小皿を片付けゆっくりと立ち上がった。
「じゃあな桃。また…来年な」
そう言って俺は廃屋に背を向け元来た道に沿って歩き出した。
…うーん随分と遅くなっちまったなぁ…。
もう麻衣は帰ってきてるだろうか。
続