摩天楼 その33

river  2008-11-09投稿
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指先から伝わる冷たさ。何も言わない。
ふと見ると、ほんの僅かな隙の開いた口の端に、何かがきらりと光った。宝石のような。
(つっかえてる)
恐る恐る指で口をこじ開けた。
思った通り、メープルシロップが喉につっかえているようだ。しかしさっきみた光はこれではない。メープルシロップの中から石を取り出した。

それはローズピンクの宝石だった。
メープルシロップを拭ってやると、宝石はエメラルドグリーンに変わった。

(これが)

すると突然辺りが揺れ始めた。
青い川は波打つ。
リリィはタビトの体を抱き抱えた。

怪獣が街に向かい始めた。人々に成す術はなかった。昼とも夜とも分からないほど暗かった。

(何が起こってる?)
宝石はコバルトブルーに変わった。
不安に駆り立てられる。どうしたことか、外の風景が見える。
立ち並ぶビルに行き交う車。

(みんな)
(気付かないのかしら)

ジオラマは次々にぐしゃぐしゃになっていった。
その時タビトの腕がリリィの体に回った。リリィは目を丸くした。



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