そして突然高笑いを始めたのだ。
宝石はコロコロ色を変えていく。
街は見たことのない有り様だった。大炎上という言葉がお似合いだ。
ひたすら笑い続けた。
暫くするとタビトは笑うのをやめて黙りこんでしまった。目に光はない。
(君は)
(弾くだけでいい)
(僕のために)
(僕のために)
心の中にメープルシロップが流れこんできた。
黒い摩天楼は役目を終えてゆっくりと街に倒れる。
青い川に飲まれる。
(溺れる…)
リリィは慌てるが、タビトは動こうとしない。沈もうとしている。
(平気)
川は思いのほか深く、何本もの光の筋が揺らぐ。
息苦しくはなかった。ただしっかりと、タビトを離さなかった。タビトはリリィの手から宝石を取り、リリィの口元にあてがった。
(リリィ)
それから宝石を口の奥にゆっくり入れていった。
赤い舌は宝石とタビトの指を迎え入れる。
(僕の)
(リリィ)
(忘れてくれたっていい)
(だけどどうか)
(これだけは)
(飲み込んでくれ)
暗い海の底に消える。
(僕の)
(リリィ…)