眠る二人を優しく揺り起こす小鳥のさえずりも、彼らにとっては夢から現実へと引き戻されるだけの、けだるいものでしかなかった。
「ねえ、ケヴィン。」
マリアはソファーに寝そべったまま、目線は天井に向け、おはようのあいさつもなしに、口を開いた。
「夢を見た。」
ケヴィンはカーペットの上でうつぶせに寝ている。
「お母さんがバタークッキー焼いてくれたの。それで、お父さんが庭でみんなで食べようって言って。あたしとあんたは大喜びでクッキー運んだ。」
ケヴィンはぴくりともしない。
「そしたらね、フィオナさんも一緒にクッキーを運んでくれたの。みんなでわいわいしながら、すっごく、楽しかったなあ。」
マリアはケヴィンを見た。「ねぇ、起きてるんでしょ。」
「・・・・・」
「フィオナさん、お姉さんだったんだ。夢の中で。」ケヴィンの肩がかすかに揺れた。
「・・・やめてよ姉ちゃん。・・あの人は戻ってこないよ。」
「・・・あたしの、お姉さんみたいだった。」
ケヴィンはマリアの声を聞いてられなくて、無理に眠りへと落ちた。
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