ケヴィンが目を覚ましたのはそれから数時間後だった。
嫌な予感がした。
だいぶまた眠ったはずなのに、背中に感じるのは人気のない空気だったのだ。「姉ちゃん?!」
勢いよく飛び起きる。がらんとしたリビング。なんの音も聞こえない。
廊下にでても、マリアの部屋に行っても、トイレ、バスルーム、今は亡き両親の寝室・・・・・・・・
どこにもいない。玄関には靴がなかった。
「姉ちゃん、まさか・・」
ケヴィンは靴を履いた。
さわやかな風の吹く午後。ウィルとフィオナは並んで歩いていた。
どこに行こうというわけではない。なにを話そうというわけでもない。ただ二人並んで、まるではたからみればカップルのように静かに歩いていた。
ウィルの足が止まる。
いつのまにか、二人は今は無き病院の焼け跡の前にいたのだ。
「火事のあとですか・・」フィオナは目を細める。
原型を止めていないその焼け跡のかたわらにはいくつもの花束と、ひざまついて静かに泣く人々がいた。