ウィルは今まで以上に、たくさんの人々が死んだことを実感した。
フィオナはふと横にいるウィルを見た。深く悲しい顔もせず、自分を悔やむ顔もせず、ただボーッと無き病院をウィルは見ていた。その頬に、一筋の涙を伝わせながら。
「お母さあん!!!」
泣き叫ぶ声が二人の耳に入る。嗚咽しながら、涙を大量に流しながす一人の幼い子供。まだ死を知るには早すぎる年に見える。
その子供が焼け跡の中へと走り込もうとするので、そばにいた父親らしき男が悔しい顔をしながらそれを止めた。
フィオナの脳裏に嫌な光景が、一瞬映し出された。(・・・何今の?)
耳鳴りとともに、それはよみがえる。
血みどろのなか、幼い子供が泣き叫ぶ。
(なに、なんなの?)
真っ赤な手がその子供の首を締め、締め、締め、締め、赤黒い血が飛び散る。
「・・・やめて!!!」フィオナは耳をふさぎ叫んだ。
「・・・フィオナさん?どうしたの?」
ウィルはびっくりした。フィオナは顔が真っ青になっている。
「いやだ、どうしよう・・・・!」
「フィオナさん?」
「・・・・思い出した・・・・」
「なにを?」