「なにを?」
「私が、この旅を始めた理由・・・・」
そう言うと、フィオナはどこかへ走って行った。
「フィオナさん?!」
「来ちゃダメ!!!」
フィオナはたくさんの建物の中へ紛れていった。
フィオナはどこと知れない建物の非常階段を上る。 湿っぽいにおいと鉄のにおい。光の入らない暗い空間。
ここなら誰も来ない。
フィオナは座り込む。
「どうしよう、そんな、私が・・・・」
頭を両手で抱え、ぶつぶつとつぶやく。
フィオナは思い出した。手を赤く染め、笑いながら人々を殺していく自分を。
「私は旅に出たんじゃない。・・・・私は・・・」
「殺し屋としての、命をうけた。」
階段をゆっくりと降りる男が、フィオナの前に現われた。
「あなたは・・・・」
「久しぶりだね、フィオナ。いや、こう言うべきか、クリス。」
「やめて。その名で呼ばないで。」
フィオナは怪訝な顔をした。薄暗い中で男はにやりと笑う。
「どうしてだ?フィオナはさっきまでの君だ。もういない。」
フィオナの体が震えだす。それを必死に止めようと、歯をくいしばり、両手で自らの体を抑えるように包む。