工場の中はやけにひんやりしていた。夜空に浮かんだ月の光りが、内装をぼんやりと照らしだし、明るかった。
ゆっくり足を進めて行く。広さは学校の体育館くらいだろうか。
辺りには使われなくなった機械が散らばっていた。
ちょうど真ん中辺りまで足を進めたカケルの背中に悪寒が走った。カケルは無我夢中で左に飛んだ。すると物凄い音を立てながら機械の残骸が、さっきまでカケルがいた場所に落下する。「うわっ」砂埃があがり、その砂埃の中に浮かぶ黒い影。人のような形…しかし異様にごつごつと太く、体格に不自然な右腕。顔もぶくぶくと膨れている。
砂埃がゆっくりと消えていき、月光に照らし出されたその影は、「む…ま…」。
グォォォォ?激しい咆哮をあげると大気が震えた。
足ががくがくする。
今までになかった感じ…無我夢中の時に感じなかった…恐怖感。「こ、こぇぇ…」夢魔が不気味に腕を振りながらカケルに走り近づいてくる。動けないカケルは必死で両腕をクロスさせてガードするが、ブンッ。夢魔の一振りで数呼吸後には、壁に叩きつけられていた。
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