涼太は苛立っていた。
自分に苛立っていた。
薫の葬式で、悲しみに暮れる遺族を前にして強い罪悪感を感じていた。
「あの時、もっと話しを聞いてやれば…。」
今思えば、あの夜から薫の様子は少しおかしくなっていた。
何かに怯えていた。
「何に怯えたいたんだ…」
涼太の頭にあの時の言葉が浮ぶ。『変な奴が…』まさか本当に部屋に潜んでいたのだろうか?ストーカー?
葬式の帰り道、薄暗くなった道を一人でトボトボ歩く。
薫のアパートに差掛かった時、何気なく薫の部屋を見た。
「薫…。」
住人がいなくなった部屋は、暗く寂しげに見えた。
「何があったんだよ。」
暫く複雑な気持ちで部屋を眺めていた。
…………?
「今の………何だ?」
誰もいないはずの部屋で、何かが動いていた。
「泥棒!?」
ゆっくり窓に近付く。
…………!!!!!!!!!!!
窓のすぐ30cmぐらいの所で、真っ黒な人がユラユラと揺れていた。
異様に手足が長くて、まるで全身タイツを被った様な人がクネクネと体を左右に揺らしている。
全身の血がサーッと引いて、動きたくても体が動かない。
ゆっくり、ゆっくりと
黒い人は揺れながら窓へ近寄って来ていた。
そいつが窓へ近くなる程に、徐々に顔の様子が見えてくる。
「……かっ薫!!!!!!!」
そいつの顔は、薫だった。
真っ黒な真中に薫の顔がついている。
気が付くと涼太は自分の部屋にいた。
夢を見ていたのだろうか…?