その後のことはあまり覚えていない。試合は9対2で敗けたらしい。
残りの藤村の打席はすべて四球だった。
試合後、オレと昇は悔しさのあまりベンチを動けずにいた。
すると突然昇が喋りだした
「ゴんな…グやジイの初べて…ダ」
昇は泣いていて上手く喋れていない。
オレもそんな昇を見て涙を堪え切れないでいた。
昇は溢れる涙を必死に堪えながら続けた。
「ぼグ…ダにも…ビっヂゃんの…力に…なれダか…っダ…」
(オレの力になれなかった?)
そんなことはない。
打たれたのはオレの実力が劣っていたから。それになにより昇のリードのおかげで良いピッチングができると感じたことさえあった。
それを昇は自分のせいだと悔やんでいる。
オレは自分の力の無さが悔しくて仕方なかった。
でもその後の昇の一言はそんな想いさえすべて吹き飛ばしてくれた。
「僕……決めた!最高の恋女房になる」
そう言った昇の目に涙はなく、オレには輝いて見えた。
(昇…オレたちまだまだ強くなれるよな)
オレはこの日、昇と一緒に最高の投手になることを誓った。