じゃりじゃりじゃりじゃりじゃりじゃり…ザッザッ、ザッザッ。
足下は砂利道からアスファルトの道にかわり、耳に聴こえる音は段々と生々しいものへと変わりつつあった。道を取り囲むように生い茂る樹木が音の通り道をつくっていて、前から押し寄せるようにぼくの耳に入り込み、そして生温い夜風と一緒に通り過ぎていった。
少し先には片側一車線ずつの道路と交じ合う十字路があった。今その十字路がはっきりと見える位置まできていて…というか砂利道を程なく歩いたところからすでに十字路は見えてはいたのだけれど、気付かなかったというか、目に入らなかったというか、とにかく今は十字路の辺りがはっきりと鮮明に見えていてそこには人がいた。こんな時間に何もないド田舎の十字路にぽつんと椅子に座っていた。ぼくの身体の中では、小太鼓を休むことなく打ち続けられるかのような鼓動がリズミカルに刻まれていた。ドキドキワクワクし過ぎて手の指の関節がむず痒い。昨日の夜、虫取りに行ったときもむず痒かった。楽しかったり嬉しかったり誰かに褒められたりすると何故かわからないけどむずむずってなるんだ。
十字路が近づくにつれ、くたびれた椅子に座る人物こそが音と声の源泉であることは明白だった。その後ろ姿はギターをさも大事そうに、犬猫でも愛でるかのように包み込み、それとは対照的に両手両腕は甚だしく動きまわりギターを愛撫していた。