――ミユキは、そこまで思い返すと、崩れ落ちるようにバスのステップから降りた。
そしてバスのドアが閉まり、ディーゼル音を響かせて、男とバスは消えていった。
ミユキはその後も、しばらく立ち直れず、四つん這いにひざまずいていた。
ひざまずいていた。
――その時、一羽のカモメが翔んだ。
カモメが翔んだ先には、海に面した白い建物があった。
ミユキはただ呆然としながら、カモメに導かれるように、その白い建物に向かって歩き出した。
白い建物に近付いてみると、そこはどうやら露天風呂らしかった。
ミユキは、入口をそっと覗いた。
受付には誰もいなかった。
だが、入口の脇を見ると、入浴料の券売機が置いてある。
ミユキは、券売機でチケットを買うと、誰もいない受付にチケットを置いて、浴場へと向かった。
浴場は混浴だった。
ミユキは一瞬、躊躇したが、中を見ると誰もいなかった。
服を脱ぎ、ミユキはそっと露天風呂に入った。
露天風呂からの眺めは壮大だった。
青い海、そして青い空が一望出来た。
まぶしい太陽の光と、爽やかに吹き抜ける風も、心地良かった。
ミユキは、心と身体がみるみる癒されていくのを、感じていた。