竹刀は竹を避けた二人を冷静な目で見ていた。
「油断大敵、避けても無駄よ」
「タクト!足下だ」
タクトが身を翻した瞬間、足下から凄い勢いで先の尖った竹が生えだしてきた。
「ウェド、これじゃあ切りがない。どうする?」
タクトが次々と生えだしてくる竹を避けながら、ウェドに問い掛けた。
「いい考えがある」
ウェドも同じく竹を避けながら答える。
ウェドがタクトに囁いた。
「このやろう!」
そう叫ぶと突然ウェドが竹刀の方へ走って行った。
「無謀なことをするわね」
竹刀はウェドと自分の間に無数の竹を生やして、竹の壁を作った。
「これで近づけないわよ」
作戦成功だ!
竹の壁で視界が遮られ、竹刀からこちらは見えない。
タクトは急いでシャープの周りの竹を切り、外に出した。
「タクトさん!」
シャープが心の底から安心した声を上げた。
「シャープ作戦があるんだ」
竹の壁の向こう側には竹刀がいる。
「あっちゃ〜、私としたことが、これじゃあ見えないわ」
竹刀が竹の壁を土に戻した時だった。
「今だ、行けっ!」
「覚悟しろ。竹刀!」
突然、目の前にシャープを背負ったタクトが飛び出してきた。
「奇襲のつもり?」 確かにいくらタクトでも遠過ぎる距離だ。
「さようなら〜」
再び竹の壁が作られようとしている。
「シャープ!」
「はい!」
シャープがすかさず氷の玉を杖から飛ばした。
タクトが走った分、スピードが増された氷の玉が竹刀めがけて一直線に飛んで行く。
「忘れてた。あの子、氷魔導師だった・・・」
再び竹の壁が作られた。
「当たったのか?」
竹の壁の前でタクトに聞く。 「分からない。シャープはどう思う?」
「揺れてたので・・・分かりません。当たっていたら凍っているはずです」
「・・・確かめよう」
タクトが不意に言い出した。
「本気か?凍った振りをしているだけかもしれないぞ?」
「フラットがいるかも知れない塔は向こう側にある。どっちにしろ、向こう側に行かなくちゃならない」
タクトが冷静に言う。
「確かにタクトさんの言う通りです」
シャープも賛同した。
「・・・分かった。タクト、竹を伐ってくれ」
タクトは黙って竹を伐り始めた。
竹の向こうには凍りついた竹刀が立っていた。