絵を描くのが好きな少女がいました。それはそれは大好きで毎日描いていました。でもお家は貧乏でクレヨンも紙もろくに買えません。
それでも少女は絵を描くのが好きでした。
「お前本当に絵が好きだな!」
ハルは言った。
「うん、いつか画家になるんだ」
リリーは嬉しそうに言った。
「じゃあさ…」
「何?」
「お前の絵を俺が買ってやる。それでお前ん家裕福にしてやるよ」
ハルは照れながらもはっきりそして嬉しそうに言った。
「でもお金はどうするの?」
と、リリー。
「知らねえの?俺金持ちなんだぜ。お前の絵なんて何枚でも買ってやるさ!」
「本当?」
「ああ本当さ」
嘘だった。ハルもリリーと同じくらい貧乏だった。ただ何となく言ってみただけだ。ただリリーを見ていたら無理な事言ってみたくなっただけだ。
「じゃあ約束しよ!」
リリーが言った。
「ああ」
指切りげんまん嘘ついたらはりせんぼんのーますゆびきった…
リリーはそんな昔の思い出を思い出していた。あれからどれくらいたったのだらうか。遠い昔のような気がする。あの約束の後リリーは少し遠くのところへ引っ越してしまった。父の実家に帰ったのだ。ハルには挨拶もできなかった。
「…絵なんて描きたくないよ」
リリーは呟いた。リリーの両手首には手錠がされていた。それは[売り物屋]の商品である事を示していた。[売り物屋]とは人間を売り買いする店の事だ。リリーはそこに親に売りに出された。ただたんに金ほしさのために。リリーの絵の上手さをかわれたのだ。今度売られたら一生自分を買った奴のために絵を描くことになる。そんな事絶対に嫌だった。
リリーはハルがどうしているのかだけが気になっていた。