「いらっしゃいませ〜」
俺、倉沢諒司はバイト先のファミレスで、来店してきた女性客に営業スマイルを向けていた。
「あれーっ!あんた…」
「恵利花ったら、どーしたの?」
「ねェ、聞いて聞いて!
この人ね、えっちの達人なんよ。
…も〜、すっごいの!!」
「うそーっ!……マジ?」
「お、お客さま……ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」
他の女性客や、エリカの連れの娘たちに強烈な好奇の視線を浴びながら、俺はサッと厨房に逃げ込んだ。
表の話がまるっきり筒抜けだったようで、スタッフの連中がニヤニヤしながら俺の焦った様子を眺めている。
(あれだけデカい声で話せば当然の事だが……)
「諒司くぅ〜ん、お盛んだわねェ。 あまり羽目外すと後のフォロー大変よ?」
「いえ、美和さん、そんなんじゃないですよ…」
俺を横目でチロッと一瞥した店長の手島美和が、意地悪い口調でからかってきた。
彼女はかなりの美人だが、性格がムチャクチャきつい。
…はっきり言ってサディストの疑惑があるくらいだ。
「ま、頑張ってオーダー取ってきてや、えっちの鉄人君。 おっと、達人かぁ、あははは」
「チョーさんまで… 勘弁して下さいよ〜っ」
俺は調理スタッフのチーフ長島幸司のはやしたてる声を背に受けながら、グッと覚悟を決めてフロアへと戻った。