「第4章・雨」
その日は、朝から雨が降っていた。
リョウは職場の近くに住んでおり、自転車で通勤している。
雨は小降りだったので、いつも通りに自転車で通勤した。
「こんな日は仕事を早く終わらせるに限る」 そうつぶやいた。
ところがそんな日に限って仕事が多く、23時に帰宅した。
帰ったら、まずは遠距離中の彼女へ電話することが習慣であった。
電話をしようと携帯を手にとると、一通メールを受信していた。
「誰だろ?イオリからだ。今日は休みだったような…」
[何してます?街で一人で飲んでるけどヒマですか?]
イオリとはあまり親しくなかった。というよりは、アドレスを交換したばかりだった。
<今、帰ったよ。明日は休みだから行ってもイイけど>
リョウは、あまり考えずにメールした。社会人とは、得てして社交事例が必要だということを分かっていたから。
[じゃあ、待ってます。街に着いたらメールしてください]
リョウは正直驚いた。でもその反対の気持ちも芽生えていた。
雨が降って濡れたせいもあるかもしれない。
仕事に疲れていたせいもあるかもしれない。
今日は誰かと居たかったかもしれない。
リョウは彼女(シノブ)にメールした。
<後輩と飲みに行って来るよ。またメールするね。>
雨は止んでいた。