「あー気持ちいい…」
ミユキは露天風呂を堪能していた。
「ずぅっと、こうしていたい気分…」
海のそばの岩肌に、もたれかかりながら、ミユキは静かな海をいつまでも眺めていた。
「あ〜ホント気持ちいいねぇ」
突然、背後で声がした。
男の声だ。
ミユキが驚いて振り返ると、いつの間にか一人の若い男が、お湯の中に入っていた。
「ちょーっと!勝手に入って来ないでよ、エッチ!」
ミユキがそう言うと、
「そっちこそ、まだ準備中なのに、勝手に入って来んなよな」
若い男は言い返した。
「それにココ、混浴だから別に文句言われる筋合いねーし」
「あなた誰?」
ミユキが尋ねる。
「俺はマモル。この風呂屋で働いてんだ」
「あなた、このお風呂屋の人なの?」
「ああ。ただのバイトだけどな。いつも営業前の風呂掃除の間に、こうやってお湯につかるのが、俺の楽しみなのさ。…で今日に限って、入ってみたらキミが居たという訳さ。」
「そうだったんだ…それで誰も居なかったんだ」
ミユキが答えた。
「せっかくだから、ゆっくりしていけよ。まだ営業まで1時間以上あっから。オヤッサンもしばらく来ねぇし」
マモルは微笑みながら言った。