「ロイ…」
ミリスは激しく頭を振って嗚咽を漏らしているロイを、思わず抱きしめた。
「異変に気付いた町の人たちが慌てて父さんを呼びに行って、何とか水の魔法で消し止めたんだけど…リアは、全身火傷でもう…息をしていなかった…」
ロイは自らの膝頭をズボン越しに爪でひっかいた。
「あの日から僕は笑えなくなった。姉ちゃん達は家に来なかったから知らなかったと思うけど、一日中爪で自分自身を傷つけて、服に火をつけて…あの頃の僕は自分を傷つける事でしか、生きていけなかったんだ…」
「ロイ…」
「でも、母さんや父さん、兄さん達が僕を救ってくれたんだ。自分達だって、娘を亡くして傷付いているはずなのに、僕を第一にして考えて、接してくれた。そのお陰で、今の僕がある。感謝してもしきれないよ、皆には…」
ロイはそう言ってぐっと拳を握り絞めると、震える体を止めて、真っ直ぐに前を向いた。
「…今でも、夢に見るんだ。リアと三人で、仲良く遊んでいる所を…。その夢を見ると罪の意識が芽生えてきて、草や葉っぱをガラス皿に入れて、火をつけて、それを水魔法で消す…。そんな事をまだ時々やってるんだよね…ははは…」
ロイは寂しそうに笑って、一つ大きく息を吐いた。