ハルは小さな炭鉱で働いていた。ハルはあれからずっとこの町にいた。突然と姿を消したリリー。
数日後引っ越したことを聞いた。でもずっとハルは覚えていた。
俺がリリーの絵を買ってやるよ。
リリーがいつか有名な画家になってハル耳にも届くくらいに。いつかリリーと会えるように。その時のためにハルはこつこつと炭鉱で稼いだお金を貯めていた。そんなある日、同僚のヒューズがハルに言った。
「知ってるかい?この炭鉱で[売り物屋]から働き人を買うんだよ」
「へぇ。またそんな金よくあったな」
ハルは基本的に[売り物屋]が嫌いだった。人を売り買いするなんて馬鹿げている。だが[売り物屋]はすっかり世界に浸透していた。だから[売り物屋]に売られる人はかわいそうくらいにしか思っていなかった。
「ハハ。とにかくこれをみてみなよ」
と、ヒューズはボロボロの服のポケットから紙を出してハルに見せた。
「何だいこれは」
と、ハル。
「[売り物屋]のカタログだよ。この中からほしい人を買うのさ。この前バンクに譲ってもらったんだ」
バンクも炭鉱仲間の一人だ。ヒューズが出した紙には名前と顔の絵があった。その人の身長や特技までも事細かに書かれている。そこでハルは信じられないものを見た。
「No.26リリー?」